Web音遊人(みゅーじん)

新開発の音響システムが表現力のカナメ。管楽器の可能性を広げる「デジタルサックス」

サクソフォンのデジタル化を実現

「アコースティックサクソフォンのデジタル化は、以前から企画案は出るものの、なかなか製品化に至っていませんでした。それが今回、サクソフォン設計・生産、電子楽器設計、音響機器生産などの部署を超えてスタッフが連携し、知恵を出しあうことで、ようやく実を結んだといえます」。そう語るのは、デジタルサックス開発担当の宮崎裕さん。

2020年秋に発売以来、高い人気を誇るデジタルサックス「YDS-150」。人気の理由のひとつは、音量調節が可能で、自宅でボリュームを落として吹けること。またサクソフォンと同様の操作性で豊かな音色と響き、吹奏感が得られるところも奏者の支持を得ています。
「一般的なデジタル管楽器は、キイレイアウトや操作法が独自のもので、サックスというよりウインドシンセサイザーであることが多いです。ですがヤマハのデジタルサックスは、サクソフォンと同様のキイレイアウトで、操作法も同じなので、持ち替えがスムーズにいくところが強みです」と、マーケティング担当の玉井洋行さん。

普段サクソフォンを吹いている人が、違和感なく操作できるのに加えて、管楽器初心者でも簡単に音を出せるハードルの低さもデジタルサックスのポイント。「サクソフォンを吹いてみたい」「昔サクソフォンをやっていたけれど、ブランクがあり自信がない」といった人も、手にしたその日から演奏を楽しめます。

部署の垣根を超え、開発に携わったスタッフが集合!このほかにも多くのスタッフがいるのだそう。(後列左端:開発担当の宮崎裕さん、前列左から3人目:マーケティング担当の玉井洋行さん)

管楽器らしい吹奏感を生む新開発の音響システム

デジタルサックスの表現力の要は、新開発の「ベル一体型アコースティック音響システム」。スピーカーだけでなく、管体内部の音響管、ベルが一体となって音が鳴ることで、管楽器らしい豊かな響き、吹奏感を得られます。
「また、サクソフォン(ソプラノ/アルト/テナー/バリトン)の内蔵音は、プロのサクソフォン奏者が一音一音吹いてサンプリングしています。音色の種類によりますが、サクソフォンらしい荒々しさ、ノイズをあえて残しているところも、管楽器らしさにつながっています」(宮崎さん)

スピーカーから出た音と振動が、音響管を通してベルまで伝わり、管体全体が振動。それがキイやマウスピースを通して奏者にフィードバックされることで、アコースティックの吹奏感を得られる。

ベルは、アコースティックサクソフォンと同じ、イエローブラス製のものが採用されています。
「ベルによって響きが増幅されることでも、管楽器特有の鳴りが生まれます。当初、簡易形のベルにする案もありましたが、長年サクソフォンをつくってきたヤマハとして、“本物のベル”にこだわりました」(宮崎さん)

(写真左)音響効果だけでなく、見た目のインパクトも大きいイエローブラス製のベル。(写真右)専用のマウスピース、リード、リガチャーは、ヤマハのアルトサクソフォンと同じ形状のものを採用。

デジタル楽器ならではの多彩な機能も魅力

デジタルの利点を生かした、多彩な機能もポイント。ヘッドホンをつなげば完全に消音でき、夜中でも音量を上げて演奏できるほか、手持ちのスマホとBluetooth®接続すれば、ヘッドホンから音源と演奏音を一緒に鳴らすこともできます。
「楽器とパソコンをUSBケーブルでつなぐと、マイクがなくても演奏音を録音でき、しかも高音質なので、ネット配信や音楽制作に活用できます。また、アプリを使ってソプラノ・アルト・テナー・バリトンを多重録音し、一人でサクソフォン四重奏を表現するといった楽しみ方もあります」(玉井さん)

さらに、無料の専用アプリ「YDS Controller 」を連携させると、楽器の調性や運指のカスタマイズが可能。
「アプリを使って自由に移調(トランスポーズ)できるので、普段アルトを吹いている人がソプラノを吹いたり、フルートやバイオリンの曲を吹いたりもできます。室内楽のチェロのパートを担当するといったことも、デジタルサックスなら簡単にできます」と宮崎さん。

(左)無料の専用アプリ「YDS Controller」を使えば、好みや演奏レベルに合わせて、キイの反応や息の抵抗感・反応の調整ができる。(右)主要な運指が登録されており、指使いのチェックや、新たな運指の登録・変更も可能。

「デジタルサックスは、サクソフォンの表現力を持っていますが、代替の楽器ではありません。使い手である皆さんによって、新しい楽しみ方、表現法が生まれることにデジタルサックスの存在意義があると思っています。ベルにステッカーを貼るといった外見のカスタマイズもありですし、“デジサク”と気軽に呼んで親しんでもらいたいです」(宮崎さん)

デジタルサックスなら、肩の力を抜いて、自由に、気の向くまま管楽器と触れ合えそうです。

■デジタルサックスYDS-150

吹き込んだ息が楽器の振動となり、あなたの唇、指先、そして心さえも震わせる。アコースティックとデジタルの融合によって生み出された「ベル一体型アコースティック音響システム」が、まるでアコースティック楽器を演奏しているような、オーセンティックで心地よい吹奏感と自然で美しい音の響きを実現しました。
詳細はこちら

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:中川晃教さん「『音遊人』のイメージは、雲を突き抜けて、限りなくキレイな空の中、音で遊んでいる人」

6817views

音楽ライターの眼

ピンク・フロイド関連映像作品3タイトルがリリース。ステイ・ホームなんて怖くない

2574views

【楽器探訪 Another Take】人気のカスタムサクソフォンが13年ぶりにモデルチェンジ

楽器探訪 Anothertake

人気のカスタムサクソフォンが13年ぶりにモデルチェンジ

11280views

暖房

楽器のあれこれQ&A

ピアノを最適な状態に保つには?暖房を入れた室内での注意点や対策

54838views

おとなの楽器練習記:岩崎洵奈

おとなの楽器練習記

【動画公開中】将来を嘱望される実力派ピアニスト、岩崎洵奈がアルトサクソフォンに初挑戦!

11379views

弦楽器の調整や修理をする職人インタビュー(前編)

オトノ仕事人

見えないところこそ気を付けて心を配る/弦楽器の調整や修理をする職人(後編)

8104views

人が集まり発信する交流の場として、地域活性化の原動力に/いわき芸術文化交流館アリオス

ホール自慢を聞きましょう

おでかけ?たんけん?ホール独自のプランで人々の厚い信頼を獲得/いわき芸術文化交流館アリオス

7303views

ズーラシアン・フィル・ハーモニー

こどもと楽しむMusicナビ

スーパープレイヤーの動物たちが繰り広げるステージに親子で夢中!/ズーラシアンブラス

13443views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

世界に一台しかない貴重なピアノを所蔵「武蔵野音楽大学楽器博物館」

22041views

われら音遊人

われら音遊人:ただ今、バンド活動リハビリ中!

7666views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

贅沢な、サクソフォン初期設定講習会

5310views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

29182views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目のピアノデュオ鍵盤男子の二人がチェロに挑戦!

8109views

上野学園大学 楽器展示室

楽器博物館探訪

日本に一台しかない初期のピアノ、タンゲンテンフリューゲルを所有する「上野学園 楽器展示室」

18996views

音楽ライターの眼

二重のイリュージョンにマイケルの声を聴く/SINSKE produce 打楽器アンサンブル

2477views

オトノ仕事人

大好きな音楽を自由な発想で探求し、確かな技術を磨き続ける/ピアニストYouTuberの仕事

44060views

スイング・ビーズ・ジャズ・オーケストラのメンバー

われら音遊人

われら音遊人:震災の年に結成したビッグバンド、ボランティア演奏もおまかせあれ!

5570views

Venova(ヴェノーヴァ)

楽器探訪 Anothertake

すぐに音を出せて、自由に演奏できる。管楽器の楽しみを多くの人に

13875views

サラマンカホール(Web音遊人)

ホール自慢を聞きましょう

まるでヨーロッパの教会にいるような雰囲気に包まれるクラシック音楽専用ホール/サラマンカホール

20363views

山口正介 Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

マウスピースの抵抗?音切れ?まだまだ知りたいことが出てくる、そこが面白い

5660views

エレキベース

楽器のあれこれQ&A

エレキベースを始める前に知りたい5つの基本

2617views

ズーラシアン・フィル・ハーモニー

こどもと楽しむMusicナビ

スーパープレイヤーの動物たちが繰り広げるステージに親子で夢中!/ズーラシアンブラス

13443views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

9687views